vol.7
けま喜楽苑 介護職員
2019年4月入職
松永 祐佳(マツナガ ユカ)
大学 福祉系専攻 卒業
きらくえんの各施設では、食事介助、排泄、持ち上げない介護(ノーリフト介護)などを研究する、いろいろな「委員会」があります。委員会は、施設内の担当が集まり、各部署で行われているケアなどを語り合う情報交換の場。それぞれの委員会に参加した職員が、各々の持ち場で活用できそうなことを発信していきます。私の担当は「排泄委員会」。お通じがない方にどういうアプローチするか、「排便コントロール」もここで学びました。
委員会の学びを生かせたのが、浣腸が嫌なご利用者と対応したときです。3日に1回、排便を促す浣腸をしていたのですが、ご本人が嫌がっていらしたので、他の職員と相談し、ヨーグルトなどの乳製品を積極的にとってもらうことにしました。同時に、自力で座る力があったので、ベット上でのおむつ交換から、「トイレに座る」という取り組みを始めました。その結果、浣腸液を入れなくてもトイレで排便ができるようになっただけでなく、「便が出そうです」と意思表示もしてくれるようになったのです。
その結果は文章にまとめて委員会に報告。日々、ご利用者の体調も変わるので、「こうあるべき」という思い込みのないサポートが必要だなとも、改めて思いました。
大学進学にするまで「福祉ってなに?」「どんな仕事があるんだろう?」と思っていました。なんとなく『福祉=お年寄りが対象』と思っていたのですが、大学で、子どもも、障がい者も対象になると知り、その領域の広さに驚いたほどです。同時に、少子高齢化が進んでいる現状や将来的なことを考えると、これから必ず求められる分野だと思いました。
きらくえんは、大学で最後の実習先でした。それまでの実習先が、自分が描く理想とかけ離れていて、半ば高齢者福祉の道を諦めていました。しかし、きらくえんは外観もきれいで、インテリアも施設っぽくない。実践しているケアも素晴らしい。すべてにご利用者目線で徹底されていました。お部屋の雰囲気も、その方に合わせて一部屋一部屋しつらえる。出かけたいご利用者がいたら「でかけましょう」と付き添う。食事も、その人が食べたい時間に、食べたい場所で食べられます。「作業」ではなく、一人ひとりにしっかり寄り添った介護が行われています。「ここなら両親をいれても大丈夫」実習中に感じた印象は、職員として働き始めてからも変わりません。
大学でも「ノーマライゼーション」について学びましたが、私の中ではまだ漠然としていました。きらくえんに入職しても、「ノーマライゼーションの実践」って何をするのだろうと思っていました。自分自身のこともわからないのに、「その人らしさ」ってどうやって表現するんだろう……と。しかし、私たちが無意識に自分で解決できることも、ご利用者は自分でできない場合があるから、私たちに頼ってくれる。きらくえんに来て「あ、これがそうなんだ」と、一つひとつの経験が体に染み込んでいく感じがしました。
きらくえんに入職するまで、実は、自分から発言するのが苦手でした。でも、周りの先輩と一緒に仕事をしていくなかで、「自分が発言してもいいんだ」「自分の発言を聞いてくれるんだ」「発言したことを一緒に考えて行動してくれるんだ」と思う機会が多く、積極的に行動できるように導いてもらいました。
入職1年目は先輩に言われたことをやっていましたが、だんだんとご利用者に対して「こういうことをしてみたい」と、自分なりの思いが出てきました。自分の判断が間違っているかもしれないと相談したら「ちょっと考えてみようか」と先輩も一緒に考えてくれます。私が失敗してもフォローしてくれる、心強い先輩たちに支えられてきたので、私も後輩たちを支えられるようになりたいです。
介護の仕事をしていると「ありがとう」と感謝されることが多く、そのうれしさがやりがいにつながります。毎日違うことが起こって楽しいとさえ思えます。介護の現場では、知識や経験だけが求められているわけではなく、いかにご利用者の気持ちに寄り添えられるかが大事です。介護の仕事は大変なイメージがあるようで「排泄介助、食事介助、大変だよね」と言われますが、そう思われているのがちょっと悲しいくらいです。生活介助は大変ではなく、むしろ、気を配るのは、目上の方であるご利用者とのコミュニケーションの面。それは、どの業種も同じかもしれません。
しっかり現場を経験して、将来的には大学在学中に取得した介護福祉士や社会福祉士の資格を活かせるようにしたいです。ケアについてもだいぶ理解が深まってきたので、ケアプランを立てるケアマネジャーや医療ソーシャルワーカー(MSW)などにも興味があります。いろんな現場で自分のスキルをいかしていきたいです。